「キノの旅」第2日目

2日間観て思ったこと。
自分は原作を読んで予習して行ったんですが、
どう考えても原作は「読みやすい(朗読しやすい)話」ではないと思いました。
もともと音読されることを前提にしては書かれていないし
作者独特の文章スタイルがあって、
倒置や句読点のリズムがところどころひっかかって
さらっと流しては読めない。
(…ていうか、あの話を全く噛まずに2本読むのは絶対に無理だって!!!)
話の内容も、登場人物はキノとエルメスがメインだけれど
キノは一人称が「僕」の女の子であまり感情を表には出さず、
エルメスは「モトラド=バイク」で、人間ですらない(笑)
そして彼らは行く先々の国ではただの「旅人=傍観者」。
その国で出会った人間達が幸せになろうが不幸になろうが
3日間だけ滞在して、そして去っていく。
とても感情移入のバランスが難しい話です。
どこかで見た感じ…と思ったら、「銀河鉄道999」(笑)
でも、作者が若いだけあって、「999」よりももっと乾いた雰囲気。
個人的にはベタベタの浪花節が好きなので
あの乾いた距離感が今ひとつしっくりこなかったんですが、
演者の皆さんはそれぞれのスタイル・解釈で
それぞれの「キノの旅の世界」をみせてくれました。
なにが良かったって、1時間20分
たったひとりで表現されるその世界に浸れることができること。
そしてそれが、その一瞬しか存在しないライヴな特別世界であること。
その時、その場所に自分で足を運ばないと手に入れることができないから
万難を排して、チケットを握りしめて、そこに行くんだなぁと。


というわけで、2日目です。
自分は社長ファンなので、
どうしても目線が社長シフトになりますが何卒ご勘弁を(苦笑)



森田さんは「仕事をしなくていい国」「人の痛みが分かる国」。
実は、森田さんの朗読を聞くのは初めてでしたが、
昼の部と夜の部では少し読み方を変えていました。
昼は全編淡々と。ちょっと緊張しておられた様子。
会話の場面では多少感情表現の振れ幅を広くしますが
それでも「朗読」というよりは「音読」という印象で
学校の教室で先生に当てられて読んでるような感じ。
スピードもちょっと前のめりで、その分噛んでしまって止まっちゃうと
それが目立ってしまうという悪循環。
なので、正直なところ、昼はあまり印象に残りませんでした。
が、夜は昼よりも断然良かった!!
スピードを幾分ゆっくりさせ、丁寧な印象を与えた上で
メリハリをよりわかりやすいように強調。
台詞の部分も、昼は語尾をさらっと流してしまい、
複数の人間の会話になるところはちょっとわかりにくかったりしたんですが
夜はひとりひとりをきちんきちんと演じわけておられました。
もともと滑舌というか、発音に癖のある役者さんなので
どちらかというと、地の部分が多くて状況説明メインの話より
もうすこし台詞と動きのある話の方が本人向きかと思ったんですが
…これは制作者から与えられた試練なのかな?(笑)
昼夜聴いて、やっぱり人気があるだけ底力のある役者さんなんだなと思いました。
でも、昼だけ聴いて帰っちゃったお客さんにはなかなか評価されにくいかも。
複数回ある公演ではっきりとムラが出るのはやっぱり若いからかな…。
でも、仕事に対する姿勢は本当に真面目な方だと思います。


そして、我らが社長は「旅の途中」「多数決の国」の2本。
1本目の「旅の途中」はほとんど台詞がありません。
頭からずーっと風景描写と状況説明。芝居を封じられたも同然。
原作を読んで「うわ。どうするんだろう、これ」と思った記憶が…。
が、社長はやっぱりプロでした。
日ごろの怪しい言動にはいろいろツッコミ入れてますが
「やるときゃ、やる」というところをちゃんと見せてくれるから
社長ファンはやめられません(笑)
まず、少し張った第一声で会場の空気を掌握。
観客がはっとして演者に注目したところを
かなりゆっくり目に、言葉をひとつひとつ送っていく感じで読み始めます。
聞いている人間が、情景を思い浮かべられるよう丁寧に。
トーンは同じだけれど、緩急をつけて
観客がキーワードを聞き逃さないように。
聞きながら、やっぱり社長の武器はあの「声」なんだなと思いました。
地の部分を読むときは、包み込むように柔らかく。
語尾はひとつひとつをそっと置くように。
森田さんの「キノ」はどちらかというと「少年」寄りだというのがわかる口調でしたが
社長の「キノ」はそれよりも少し曖昧にした感じ。
言葉少ないなかに、やさしさを含んで。
とにかく、昼公演の「旅の途中」は素晴らしかった。
自分的には、昼夜4本聞いた中で一番良かったと思います。
とても美しい言葉を聞いた、という気持ちでした。まるで音楽のように。

2本目の「多数決の国」は登場人物が増えて、1本目より動きのある構成。
とはいえ、前日の井上さんが読んだ「嘘つき達の国」に比べると全然少ないですが。
キノの台詞もエルメスの台詞も1本目より多いので
それぞれの性格が出せます。
キノは平穏なイメージ。背景にプロジェクターで映されるイラストのキノが
ちょっと女の子っぽい(身体つきが丸みを帯びている感じ)なので
あまり違和感を与えないためか、気の弱い感じの男前声で。
対するエルメスはコミカルな三枚目調。
物語の五分の三を越えたころからもうひとりの登場人物がでてくるのですが
そこから3人の掛け合いになるためか、
心持ち読むテンポを速めてリズムを出してきました。
それが、なんとなく(やっと芝居ができるぞー!)といううれしさに感じられてちょっと笑。
そして、その3人目の感情に引きずられるように
どんどん芝居が熱を帯びていき、そのまま感情を噴出させるかのように
最後は立ち上がっての大熱演。
マイクなしで叫んだ一言に、びくっと肩をふるわせる観客多数。
演者が空気ごと持っていった一瞬でした。
そのあとは、またキノとエルメスのコミカルなやりとりがあって終幕なんですが
組み立てがしっかりしているため、ちゃんと余韻が残るいいエンディングになりました。
は~、やっぱり25年のキャリアは伊達じゃありません(笑)

夜の部はさすがに疲れが出たのか
ちょっとスタミナ切れの社長でしたが、
そのあたりも捨てるところは捨て、残すところは残し
持ち前の集中力と瞬発力で乗り越える力業の勝利。
やっぱり25年のキャリアは伊達じゃありません(笑)。

最後は森田さんと二人で出てきて観客にごあいさつ。
二人の「やり終えた!」という笑顔がとてもステキでした。


しかしながら、
今回出演された4人の役者さんには
本当に過酷なステージだったと思います。
1時間20分、煌々と照りつけるスポットライトはかなり熱かったでしょうし
椅子に座ったままたったひとりで読み続ける集中力はちょっとやそっとじゃ引っ張れません。
社長ですら、昼は1回、夜は数回噛んでたし。
(逆に昼の1回だけ、というのは本当にすごかったと思う。びっくりしました。)
でも、観客としては、優れた読み手の朗読を堪能できて本当に幸せな2日間でした。
社長本人も「俺の真骨頂」(笑)と言っていただけあって
今回の公演にかける情熱は熱かった。そしてそれをちゃんと証明してくれました。
自分も、疲れた身体にむち打って東京まで行った甲斐がありました。
ありがとう、田中さん、井上さん、森田さん。
そして、ありがとう社長!!!(惚れなおしたぜ!)

次があったら、また必ず行きます。
心躍るあの一瞬一瞬を手に入れるために。

ていうか、また絶対朗読公演やってくださいー!!
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by yuqui084 | 2006-08-14 20:02 | 社長!

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